クロッカスの咲いた日

みんな泣いていた。ママは忙しそうにお店の中を行ったり来たりしている。わたしたちが泣いているのは部長の熱い心意気に感動したからで、悲しいことがあったからとか、そういんじゃ全然ない。わたしが入ったとき29歳だった男は32歳になって、いまは酔っ払って悲しそうにテーブルを叩いている。彼はわたしたちの涙について誤解しているようだったけど、そんなことは些細な行き違いでしかない。
写真のわたしは呂律のまわっていない上司に肩を抱かれてうつむき加減に歌っている。このときの曲が「男と女のラブゲーム」だったと記したところで何の役にも立たないけれど、日常とはそういうもんであるからここに記そう。


あんた泣いてるの? しょうもない子だね。